はじめに
相続のご相談を受けていると、
「家族仲は良いので、相続でもめることはないと思います」
というお話をよくお聞きします。
確かに、家族関係が良好であれば、相続の話し合いも円満に進むように思えます。
しかし実務では、家族関係とは別の理由で遺産分割ができなくなるケースがあります。
その代表的な例が、相続人の認知症です。
今回は、相続と認知症の関係、そして遺言の重要性について解説します。
遺産分割は相続人全員の合意が必要
人が亡くなると、財産はいったん相続人全員の共有状態になります。
そのため
・預金の解約
・不動産の名義変更
・財産の分配
を行うためには、原則として相続人全員の合意による遺産分割協議が必要になります。
つまり、相続人の中に一人でも意思表示ができない人がいると、遺産分割協議を進めることができません。
相続人に認知症の方がいる場合
例えば、次のような家族を考えてみます。
・夫
・妻
・長男
・次男
夫が亡くなった時に、妻が認知症になっていた場合です。
妻に判断能力がないと判断されると、妻自身は遺産分割協議を行うことができません。
この場合、家庭裁判所に申し立てて「成年後見人」を選任してもらう必要があります。
成年後見人が選ばれるとどうなるか
成年後見人が選ばれると、その人が認知症の方の代理人として遺産分割協議に参加します。
しかし成年後見人には、本人の利益を守る義務があります。
そのため、基本的には法定相続分を確保する内容を前提に判断することになります。
家族で決めた分け方ができないこともある
例えば、次のような財産があったとします。
預金 4,000万円
不動産(評価額)3,000万円
家族の話し合いとして
・妻 預金1,000万円
・長男 不動産3,000万円
・次男 預金3,000万円
という分け方を考えていたとします。
家族全員が納得していれば、本来このような遺産分割も可能です。
しかし妻が認知症で成年後見人が選ばれた場合、事情は変わります。
この家族の法定相続分は
妻 1/2
長男 1/4
次男 1/4
です。
総財産7,000万円のうち、妻の法定相続分は3,500万円になります。
しかし家族の話し合いでは、妻の取り分は1,000万円です。
この内容では成年後見人は本人の利益を守る立場から同意することが難しくなります。
つまり、家族全員が納得していても、その分け方ができなくなる可能性があるのです。
この問題を防ぐ方法
この問題を防ぐためには、財産を残される方が元気なうちに遺言を書いておくことが重要です。
遺言があれば、基本的には遺言の内容に従って相続が行われます。
例えば
・妻 預金1,000万円
・長男 不動産3,000万円
・次男 預金3,000万円
という内容を遺言として残しておけば、家族で考えていた分け方を実現することができます。
遺言は「争い防止」だけではない
遺言というと「相続争いを防ぐためのもの」と思われがちです。
しかし実際には、認知症など将来のリスクに備えるという意味でも非常に重要な役割があります。
元気なうちに準備をしておくことで、ご家族が困る事態を防ぐことができます。
まとめ
相続では、家族仲が良いだけでは解決できない問題があります。
相続人の中に認知症の方がいる場合
・成年後見人が必要になる
・法定相続分が基準になる
・家族の希望どおりの分割ができない
ということが起こる可能性があります。
そのような事態を防ぐためにも、財産を残される方が元気なうちに遺言を作成しておくことが重要です。
将来ご家族が困らないための準備として、遺言について一度考えてみてはいかがでしょうか。
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