親の後見人に子供がなっており親に多くの財産がある場合に、後見人である子供から「相続税対策をしたいがいいですか?」との相談があります。
一口に相続税対策と言ってもいろいろあります。
相続人になる子どもに預貯金や不動産、親が経営する会社の株を名義変更する
子どもが親に上記の財産を名義変更を受けるのに代金を払うのであれば「売買」となりますが、一般の方が言う名義変更というのは法律上「贈与」となります。
後見人は成年被後見人の財産を不必要に減らさないようにしなければなりません。
贈与は成年被後見人にとってはメリットはなく、子供にとってだけメリットがある行為です。
また、相続税が安くなるメリットがあるのは親である成年被後見人ではなく納税をする子供です。
したがって、預貯金や不動産、親が経営する会社の株の名義変更(贈与)を相続税対策としてすることはできません。
子どもを受取人とした生命保険に加入する
生命保険の控除があるため、契約者、被保険者が親、受取人を子供とする生命保険に加入することが相続税対策として一般に行われています。
上記のような形で生命保険に加入すると、親は保険料を払うだけで保険金を受け取ることは出来ません。
そうすると成年被後見人にとってはメリットはなく、子供にとってだけメリットがある契約になります。
また、相続税が安くなるメリットがあるのは親である成年被後見人ではなく納税をする子供です。
したがって子供を受取人として生命保険に加入することは相続税対策としてすることはできません。
預貯金が多額にあるので不動産を購入する
不動産の時価と相続税評価額に差額が生じることを活用して預貯金を不動産に変えるということが相続税対策として行われることがあります。
(なぜ、相続税が安くなるかは割愛いたします。)
不動産を購入するのであれば、上記の2つのように親の財産が減るわけではないのでメリットがないとは言えず、不動産を購入することは構わないようにも思えます。
しかしながら後見人は成年後見人の財産が減るリスクも考えなければなりません。
ハイリスクハイリターンの金融商品を買うなどのリスクの高い行為はよほどの必要性がないかぎり、すべきではないとされています。
不動産も価格が下がるおそれは十分に考えられます。
またお金が必要となった場合に、預貯金であれば金融機関で引き出すだけですが、不動産は現金化するのにも時間が掛かります。
以上の理由から、不動産を購入することはよほど特別な理由がない限りできません。
以上のとおり、一般的に行われている相続税対策は後見が始まるとできなくなってしまいます。
相続税対策をするなら判断能力がある元気なうちにされることをお勧めします。